<STVV 立石敬之 × TECRA 今井豊和 対談>

こちらは202071日に実施されたものです

 

左:立石敬之 シント=トロイデンVV CEO ,右:今井豊和TECRA株式会社 代表取締役

 

■日本を出て海外で事業をやる意義

 

久保隆明(ファシリテーター,以下 久保):立石さんはサッカー今井さんは建設事業と、

御二人は自国での事業をあえて海外でやられていますが、その意義は何なのでしょうか?

 

立石敬之(シント=トロイデンVV CEO,以下立石):「日本人頑張れ」という考えの元で企画をスタートさせたんですが、僕は自分が生まれ育った日本という国に自信を持っていまして、スポーツを通じての日本のモノ作りやクオリティ、プレイヤー、ビジネススタッフというものは、海外と比べて絶対に負けないと思っています。もしかしたら周りからの評価は高くないかもしれないですが、それに対してチャレンジをしていきたいなと思っているんです。

 

久保:長友(佑都)選手のように日本から海外へ人を送り出した立場から、海外から来る人を引っ張る立場に変わりましたね。そのあたりはいかがでしょうか?

 

立石:そうですね。これまでは送り出した後は「頑張ってこいよ」という感じで、その後の彼らの体験談を聞いて「大変だな」とは思っていたんですけど、今は自分が海外にいるので、彼らと同じ目線で「俺たちも一緒に闘っている」と意識はありますね。

 

久保:「よし、行ってこい!」と送り出したとしても、失敗する例もあるかと思うのでサポートする姿勢が大切だということですね。

 

立石:日本人選手はだいぶ活躍していますけど、同じくらいの数が失敗して日本へ帰ってきています。その理由は、力がなかったからなのか、または対応能力や順応性に問題があったからなのかだとは思いますけれど、選手によっては入り口のところを少しサポートして自信を持たせるだけで、そのまま走ってくれることもあります。例えば鎌田(大地)、遠藤(航)あたりがそうで次のステージにきていると思います。

 

久保:建設事業の場合、途上国が非常にプロフィッタブルだということはわかるんですけど、精密な質の日本人を相手にしていた商売を、ルーズな国に行ってやるのは困難なことだと思います。それでも海外でやる理由はなんなのでしょうか?

 

 

今井豊和(TECRA株式会社 代表取締役 以下今井):自分が海外に出て思うことは、日本の技術やモノ作りに対する姿勢は素晴らしいという事なんですね。ただ、見せ方はあまり上手くないと思います。

そこで東アジアへ技術だけを渡しにいくのではなく、労働環境が悪いのでそれを整えたり、日本でのやり方を理解してもらうことも必要なのではないかなと考えました。というのも、日本は最終的に外国人労働者の人たちを受け入れていかないと、日本の建設業は成り立たないと僕は思っているんです。ですが、日本が外国人労働者の受け入れ態勢だけを整えて、実際に日本でどういう仕事をするのかわからない中で来てもらっても、彼らが仕事を続けていくことは大変だと思うんですね。例えば、日本の建設現場では、現場を整えて清潔にしてから作業を行います。そういった細かいことを、僕たちが実際に海外へ行ったときに現地の人に教えて、理解して頂くことが大切なのではと思っています。

 

■海外で感じたそれぞれの仕事へ価値観のギャップについて

 

久保:建設現場の環境を整えるということは、サッカーに置き換えると、選手のパーソナリティやメンタリティを整えるということに繋がりますね。

 

今井:現場に優秀な方がいらっしゃったとしても、1人では絶対にビルは建たないですよね。何百人という人が携わり、何十種類もある仕事を職人さんたちがひとつずつ終えて次の人に渡していく……そうやって建物は完成していくので、自分たちの仕事が終わったら次の人が少しでも仕事がしやすいように現場を綺麗にしてから渡すなど、準備をすることが大事なんです。

それができると、最終的に良い現場で自分も働くことができるということを理解してもらいたいと思いました。

ですがモンゴルはまだやりっぱなし(の現場)がほとんどです。

なのでモンゴルに行く度に毎回一緒に掃除をするんですが、最初は10人いても、振り返ると5人しかいなかったりする。誰かのために仕事をしようという意識が少ないのかなとは感じますね。

 

久保:チームのためにもなるし自分のためになる、という気持ちに欠けているんですね。サッカーの場合、海外と日本のやり方の違いはありますか? 

 

 

立石:先ほど今井社長がおっしゃっていたように、自分がヨーロッパへ行ったとき、選手たちのロッカーが凄く汚かったんですね。”使ったら綺麗にする”といった日本人からすると当たり前のことができないんだと思ったことがあります。一度、日本代表が注目され、STVVのロッカーの使い方がニュースになったこともありました。それと労働組合なども関係していますが、就業時間になると仕事をほったらかしにしてでもパッと全員いなくなるんです。最初はそれが凄くストレスで、社員の人たちの働き方に戸惑っていました。ですが今は僕がそれに合わせるようになりました。今後、Jリーグが外資から資本を得ようとした場合、外国人の経営者が入って来ることになりますが、そうなると日本人が逆の立場になってくる。これからはいろいろなところでグローバル化が考えられ、働き方もですが国境がどんどん無くなっていくと思います。その中で日本人はリードできる部分を持っていると思います。なので僕もこれから更に勉強していかなければいけないし、僕は預かっている彼らの契約の時間の中で、どれだけ生産性を高めていけるか考えないとと思っています。

 

久保:サッカー選手の場合、ヨーロッパに行く事例がありますが、建設業界ではなかなか事例がない。日本の建設業界に携わる人が他の外国で活躍するということはなかなか難しいことなんでしょうか?

 

今井:難しいことだと思っています。サッカーの業界もあると思いますが日本の建設業にもライセンスがいろいろとありまして、それがないと根本的にビルを建てることができないんです。ですが、日本の場合は免許を取ることが目的になってしまって、次のステップに進もうという人は少ないですね。

日本にいれば何かしら仕事はあるので、ライセンスを取るための知識は凄くあっても、それをどう使っていくかまでは考えていないことが多いと思っています。

なのでそれをどうしていくかは課題です。

また日本では当たり前のことも、海外では当たり前ではなかったりするんです。それを変えていかないといけないんですが有志でやっている人たちは、しびれを切らして(日本に)帰ってきてしまう傾向にあります。

 

立石:「しびれを切らして」とおっしゃいましたけど、本当にそんな感じですよね。

 

今井:今は仲間が増えていろいろと形になっていますけど、僕たちが初めてモンゴルへ行って体制を整えたときに、何百人と現場に人がいる中で、日本語を話せる人たちが2人しかいなかったんです。そうなると僕が言っていることがきちんと伝わっているのか不安になったこともありまして、、、

海外の現場でどう上手く伝えていけばいいのかを考えさせられたことが3年間ほどありました。

 

■どうすれば日本の建設会社が世界で戦える様になるか

 

久保:どのようなことを変えていけば、日本の建設業界の方が世界で活躍できると思いますか?

 

今井:日本だと大手の建設会社がいて、実際に手を動かしてくれる現場の人たちがいます。サッカーで言えば、試合に出る人たちがいて、裏方さんがいてということになると思うんですけど、その手を動かしてくれる現地の人たちと、日本人が海外に行き直接対話をするようにならないと本当にやりたいことは伝わらないのかなと思います。

 

久保:官僚制のように社長が役員に伝えて、役員が社員に伝えてというようなことではなく、リーダー自ら床を張っている人たちと会話できるくらいでないと、変えていくことができないし、受け入れられていかないということですね。

 

今井:海外の場合、現場で手を動かしている人たちの大半が日当で働いている人たちなので、仕事が終わろうと終わらなかろうと、その日が終わるといなくなってしまうんですが、その人たちが現場で「そろそろ材料がなくなりそうだな」と思ったらそれを次の人に伝えないと、そこから上の人に伝わるまで時間がかかるのです。その間に材料がなくなってしまい作業が止まってしまう。そうならないようにするには、上層部の人たちが手を動かす現場にいる人たち、いわゆるプレイヤーと話をすることが大切なんです。

 

■海外でサッカーチームを経営すること

 

久保:立石さんは、ご自身が経営のリーダーとして海外へ行かれましたが、どういうところに介入ができて、逆にどういうところに苦労されましたか?

 

立石:スタートは、今井さんと同じでした。彼ら(現地スタッフ)の働き方が最初は理解ができなくて、伝えるにしてもどのスタッフに何を伝えていいのかまったく情報がなくて孤立している感じはありました。最初の半年、1年くらいはそれが本当にストレスで、当初構想したこともほとんどできなかったんですが、2年目くらいから、僕が求める基準に合わせるのではなく、彼らの能力をできる限り最大限に発揮させるにはどうしたらいいのかと思うようになりまして、彼らが気持ちよく仕事ができるよう自分で現場へ出向き、自分の目で状況を見て指示を出すようにしました。そういったことがあって最初はチーム作りが遅くなってしまったんですが、今は信頼できる人たちをゆっくり育てて、見極めていっている感じです。そこに行き着くまでに3年くらいかかりました。

 

久保:ヨーロッパの一部リーグに行ける人は、昔から凄く限られていると思います。ですが日本人選手が海外で活躍されていたとしても、それを知らないという人がたくさんいるという状態でもあると思います。長谷部選手や、長友選手が海外へ行った時と今を比較して、変わったと思う面はありますか?

 

立石:良くも悪くも両面あります。成功している人は本当に覚悟を持ってやってきたと思いますし、STVVに中村敬斗という20歳の選手が入ってきたんですが、僕は彼のことを17歳の頃から知っていますが、彼はその頃から「将来はヨーロッパでやる」と心を決めて準備をしていました。日本のサッカー業界の場合、まずはW杯で活躍をしてから海外へ行く、という感じだったので、メンタリティも覚悟を持っている人が多かったと思うんです。ですが最近は、周りにサポートされながらいい選手になったけど、本人の覚悟と準備が足らないという選手も多いんですね。日本人のほとんどの選手が「将来はヨーロッパでやってみたい」と言いますが、本当に準備している選手は、実際には3割程度かなと思います。

 

久保:テクニカルな面で、日本と海外のサッカーそのものに違いはあるのでしょうか? 

 

立石:最近、最初のステップアップとしてベルギー、オランダ、ポルトガルに行く選手たちが多いんですが、それらのリーグは、ショーウィンドウとして自分の実力を見せるところなんですよ。そこでで1年くらい活躍をして、次のチームに行くという感じの選手が多いので、チームに対するロイヤリティがあまり感じられません。なので実際のプレイに関しても、一対一の連続が多いですね。それとSTVVがあるベルギーの場合、オランダ語、ドイツ語、フランス語と3つの公用語があるくらい人種がいろいろ入り混じっているので、アフリカ系のアスリートのような選手もいれば、オランダ系の身体の大きな選手もいる。ですので個は凄く鍛えられるんですが、チームプレイとして考えると少し寂しく感じることはあります。

 

久保:サッカー選手として成功するために、高い志を持っている選手が日本にいるとして、それを実現するにはヨーロッパの育成を重視するというか、5大リーグのような方法でいくのが必須だと思いますか? 

 

立石:僕はあえて海外に出ていますが、最終的には、海外で得た経験をJリーグへ還元したいと思っているんです。世界中でJリーグが放映されて、選手のギャラもいいし、Jリーグこそが5大リーグに負けないリーグだということを理解してもらえたらいいなと思っています。

 

久保:あえて日本の外へ出ていき、そこから日本の環境を変えていきたいということですね。

 

立石:日本人選手が、日本にいてもプレイヤーとしての最高峰を目指せる、プレイのレベルも、経済的にもいろいろな意味でいいリーグになるにはどうしたらいいかを考えていますし、それが自分の最終的な目標です。

サッカーをやっている日本の子供たちのほとんどが、ヨーロッパでのプレイを希望しますが、それはフットボールの最高峰がヨーロッパにあるからなんですよ。

その中で、どうやったら日本のレベルを上げることができるのか……スター選手がもっといて、競技レベルが高くなって、給料もいい、アジア中の子どもたちが日本でプレイをしたいと思えるようなリーグになれると思っているので、それを目標に考えています。それと最近はスポーツ全体がそうですが、W杯を見ても八割がアジアの企業がスポンサーなんです。なのでアジアのスポーツとして、Jリーグが引っ張っていかなくてはならないとも思っています。

 

久保:Jリーグの基本的な部分を変えていきたいと思っていらっしゃるんですね。

 

立石:Jリーグに行って、そこで育って、最後にJリーグで引退できるまで。Jリーグでも十分高いレベルの中でプレイができて十分に稼げる、クラブW杯でも優勝できた、という感じになればいいですね。

 

■建設業界で海外へチャンレンジする意義

 

久保:今井さんにお聞きしたいのですが、日本では高層ビルがどんどん建っているので、日本に居た方が売り上げは良いと思いますが、それでも海外へ出て、向こうの人たちへ伝えたいと思うことは何なのでしょうか?

 

今井:日本人の僕たちが海外に行っても、作るのは僕らの仕事ではなくて現地の人たちです。なので僕たちは指示を出すだけになってしまいますが、日本人がもっと海外に出て現地のやり方の仕組みを少しでも変えて、彼らがやりやすい形を教えてあげられると良いなと思います。そして彼らが、いつか日本で働きたいと思ってもらえるようになることが夢です。

それで日本の建設現場は、外国人労働者の力がないと成り立たないことを知ってもらって、そして日本で覚えたことを自分たちの国へ持ち帰って、自分たちの力で建築物を建てられるようになったらいいなと思います。

 

これまでに僕たちは3つほど建物をモンゴルで作りましたが、いずれモンゴルの人たちが日本で勉強をして、自国へ戻って自分たちで建てるという環境は作ってみたいと思っています。その成長が波に乗ってきたら、小さなものでも彼らが本当に必要なものを作っていけばいいのかなと思います。

 

久保:「必要なもの」というのは、住宅の領域で現地の人たちが欲しているものでということでしょうか?

 

今井:そうです。モンゴルは人口が増えているので、若い人たちの働く先が多くなっていますが、結婚をした後に子どもができて母親が働くとなると、子どもたちを預かってくれるところがなく、働けない状況にあるんです。モンゴルでは女性の作業員の方たちも多くなっているので、例えば今後は大手の会社の中に保育所を作るなど提案できるようになれば、働ける女性も増えていくのではないかと思います。

 

久保:建物を作って完結するのではなく、街つくりまで考えて人々が生活をしやすい環境を提供したいという考えですね。

 

今井:モンゴルは、ウランバートルという首都に人が集まっているんですが、生活環境が不便な人たちへのサポートが充実していないので、僕らが日本からモンゴルに行った際にモンゴル側での信用を作って、ウランバートル市にいろいろと提案できるようになったらいいなと思っています。日本でもあるような子どもの支援みたいなことが最終的にできたらと思います。そうすれば出稼ぎというような意味だけでなく、自身のキャリアステップのためにモンゴルから海外にチャレンジしようと思う人たちも出てくるのではないかと思っています。

 

■ヨーロッパから見た日本のサッカー選手の変化

 

久保:立石さんにお聞きしたいのですが、ヨーロッパから見て、日本のサッカー選手はどのように映っていると思いますか?

 

立石:W杯での活躍によって、日本の代表選手に対する評価は凄く上がってきていますが、”侮れないな”というくらいですね。(海外の選手を)本気にさせるかというと、まだかなと思います。もちろんロシアW杯でのベルギー戦もありましたけど、日本代表がヨーロッパの人たちをヒヤっとさせるゲームをすることはできますが、日本人選手がブランディングとしてヨーロッパの中で出来上がっているかというとまだですね。ただベルギーリーグもそうですが、日本人選手がブームで今年も増えています。

我々(STVV)の第1回目(2018-2019シーズン)に卒業をしていった鎌田(大地)、冨安(健洋)、遠藤(航)辺りが活躍していることもあるんですが、ビジネスとして日本人選手がこんなにも高く売れて、日本人もスポーツビジネスの対象や投資の対象になるんだということが、ベルギーやオランダでは分かってきています。

なので日本人選手が人気で、スカウトが進んでいるのも事実です。

 

久保:商品価値として、日本人サッカー選手はどうヨーロッパでは見られているんでしょうか?

 

立石:日本人選手は監督には凄く好まれます。

しっかりとルールを守るし、戦術に対しても忠実にやる、計算が立って、試合に出られなくても不満を言わずに我慢をしてくれる選手が多い。ヨーロッパや南米の選手の場合、試合に出られないと不満が多いので、マネージメントが大変なんです。ですがその辺り日本人選手は扱いやすいというのがあると思います。逆に言うと、驚くようなことはしないということもありますが、、、

 

■アジアから見た日本の建設業界

 

久保:アジア圏から見て、日本の建設業界はどのように見られているんでしょうか?

 

今井:自分が海外に出て気付いたことは、日本の建設業界は、技術も効率も本当に素晴らしいということです。ただ俯瞰して見ると、必要以上の機能を追い求めていて、何のため誰のために作ったのかがわからなくなってしまっている感じもします。”規模や機能で競争するのではなくもう社会や顧客に目を向けてみたらどうか”とは思うことがありますね。

 

久保:日本だとある程度ブランド力のある会社が、どうしても自分の会社のものを売らなくてはならないので、商品に不要なものを足していくようなことがあると思いますが、ニーズを拾えていないということにもなりますね。

 

今井:例えばウランバートルの場合空気汚染の問題があるので、その部屋の空気が綺麗になれば充分なのですが、作られた商品にいろいろ機能が付いていることで商品の価格が高くなり、モンゴル人の顧客が手を出せなくなっているので、その地域の人たちに合わせて作ることはできないものなのかなと思ったりはします。

 

日本は省エネを働きかけて、優秀な開発の人たちが電気や照明を作ってくれますが、売り手の方は、電気料金が下がったからたくさん電気を点けても平気だと反比例なことを言うので、結局省エネの意味がなくなっています。そこをどう変えていけるのかが課題だと思います。

 

■各々の業界を代表して、一番実現したいこと

 

久保:各々の業界を代表してお話をお聞きしましたが、立石さんは個人的に日本のサッカー業界で一番実現させたいことは何ですか? 

 

立石:先ほども触れましたけど、Jリーグのブランディングですね。いろいろなことに紐づいていきますが、スポーツを職業にして、それで食べていきたいと思っている人たち……選手、監督、クライアント業務、イベンター、トレーナー、マネージメント会社などいろいろな業種がありますが、やはり産業として膨らみや成長がないと、そこに携わる人たちを食べさせていくことができません。なのでサッカーを含め、(日本の)スポーツの産業を大きくすることが僕の最終的な夢です。

 

久保:それはサッカーの日本代表が強くなるためにも必要なことだと思いますか?

 

立石:必要だと思います。ヨーロッパでスポーツは文化なんですよ。

社会の中でスポーツの存在が大きくなっているので、これからは更にスポーツを通じて経済圏や人種などの国境が無くなっていくと思います。ですので今後は労働する人たちもいろいろな可能性がでてくるし、海外から日本にどんどん人が入ってくることが予想されるので、あと10年もすれば日本人と外国人との間に生まれてくる子が日本にも多くなると思うんです。今は大坂なおみさんや、ダルビッシュ有さんなどのトップアスリートがいますが、いずれそういう子どもたちが世界的に活躍する時代が間違いなく来ると思います。

 

久保:今井さんはどうでしょうか? 建設を通じて、ご自身で達成されたい夢や目標とかはありますか? 

 

今井:ひとつひとつ変えていかなければならないところはあると思いますが、僕が最初にモンゴルで仕事をさせて頂いたときは孤児院を直しました。

孤児院では、ある程度の年齢のいった男の子と女の子が、同じシャワー室やトイレを使用していて、同じベッドで寝ていたんです。子どもたちに選択する条件がまったく与えられていなかったので、寝る部屋やシャワーを浴びたり着替えたりする場所を別の場所にしたりと少しづつ手を加えてました。

そういったことに力を貸してくれる人たちは世の中にたくさんいると思っているので、もう少し自分たちがやったことを外に発信して、仲間を作って少しづつでも解決していけたらいいなと思っています。

それが海外へ出て仕事をしている自分の夢であり、実現したいことなんだと思います。

TECRAのロゴは旗なんですが、旗を振り続けていれば、人は寄ってきてくれるし助けてくれる。これからもいろいろなところに出て、発信していきたいと思います。

右:久保隆明